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「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」読了

人工知能について今までの研究がどのように進んできたのか、また現在盛り上がっているのは何によるものなのかについてまとめられた本。サブタイトルにもなっているが、著者は「ディープラーニング」という技術が人工知能分野でのブレークスルーであると述べており、現状やそこからの可能性について詳しく書かれている。
この分野について興味はあったが、正直言葉を聞いたことがある程度しか知らなかった。そんな状態でも説明がわかりやすくて勉強になった。

簡単にまとめると、ディープラーニングが発明され、特徴量設計を人間が行わなくてよくなったということが、とにかくすごいことだという話。
学習とは機械でも人間でも「分ける」処理であり、それがうまくできると物事を理解したり判断することができる。その精度や正解率を高めることが学習である。精度を高めるためには分けるための項目(特徴量)が必要となり、人間はそれを見つけることができるが、コンピュータは人間から与えられないと特徴量を見いだせなかった。それが人工知能分野の課題とされていたが、コンピュータ自身が特徴量を発見するディープラーニングが開発され、人工知能分野に可能性が開いた。

気になったことざっくりとメモしていく。

世の中の人工知能は4段階に分けられる

レベル1:単純な制御プログラムを「人工知能」と称している

マーケティング的に謳っているものなので、実際は「制御工学」「システム工学」の名ですでに長い歴史のある分野。

レベル2:古典的な人工知能

振る舞いのパターンが多彩で、将棋のプログラムや掃除ロボット、質問に応答する人工知能が当てはまる。推論・探索を行っていたり知識ベースをいれている。

レベル3:機械学習を取り入れた人工知能

検索エンジンに内蔵されていたり、ビッグデータをもとに自動的に判断したりするような人工知能のこと。機械学習とは、サンプルとなるデータをもとにルールや知識を自ら学習するもの。

レベル4:ディープラーニングを取り入れた人工知能

機械学習をする際のデータを表すための変数(特徴量)自体を学習するものがさらに上のレベルの人工知能

ブームと冬の時代

人工知能研究はブームと冬の時代を繰り返してきた。第一次AIブームは「推論・探索」をすることで特定の問題を解く研究が進んだが、現実の問題が解けないことが明らかになり、冬の時代を迎えた。
第二次AIブームはコンピュータに「知識」を入れると賢くなるというアプローチが盛んになり、実用的なシステムが多数生まれたが、知識の記述が大変なことが明らかになると再び冬の時代を迎えた。
現在は3回目のブームであり、ビッグデータの時代に広がった機械学習ディープラーニングの大波が重なって生まれている。そこにワトソンプロジェクト、電脳戦、シンギュラリティ等の恐怖感を煽る要素も重なり波が高くなっている。

ディープラーニング

人工知能において肝になるのは「特徴量」である。例えば将棋ソフトが強くなったのは機械学習の適用と、そのためのよりよい特徴量が発見されたことである。特徴量というのは「データのどこに注目するか」ということであり、それによってプログラムの挙動が変化する。
例えば、年収を予測する問題を考えたとき、「男性」か「女性」かといった特徴量から年収を予測するというのはニューラルネットワーク等の機械学習の方法をつかって学習できる。このとき特徴量を何にするかが予測精度に大きく寄与することは何となくイメージできる。詳しく言うと「業種」「居住地域」は年収と関係ありそうだが、「好きな色」は疑問がある。「誕生日」という項目があってもそのままではよい特徴量ではなく、「年齢」に変換して初めて年収予測問題に寄与するような特徴量となる。

ただ、機械学習の制度を上げるのは「どんな特徴量を入れるか」にかかっているのに、それは人間が考えるしかなかった。そこにディープラーニングが開発され、人間が介在しなければいけなかった領域に人工知能が一歩踏み込んだ。
ディープラーニングは、データをもとにコンピュータが自ら特徴量をつくり出す技術である。前述したような人間が特徴量を設計するのではなく、コンピュータが自ら高次の特徴量を獲得し、それをもとに画像を分類できるようになる。著者はディープラーニングを「人工知能研究における50年来のブレークスルー」と述べている。その凄さは本を読んでいると何となくわかる。

終章にディープラーニングの発展や、人工知能が人間を滅ぼすのかという気になる題目にも触れられていた。人工知能自体が人間を襲うことはないが、職業や社会的な事に関して多大な影響はもちろんでてくるという話であり、ITというか、この分野うまく使えるようにならないと厳しいなと感じた。

また、コンピュータが抽出した特徴量が人間と同じになるとは限らず、コンピュータが独自の特徴量をもって世界を判断していったときに、人間には全く見えなかった世界が見えるのではないかという話はすごい興味深かった。

kindle版の方が安いのでおすすめ。